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大阪高生研「コミュニケーションの“リアル”~LINE,SNSの世界と若者~」 [例会報告]

 どの高校でも「スマホ依存」問題は話題になっていますし、職員研修を行う方向で検討されていますが、職員研修の中で「コミュニケーションが苦手な若者・子供に「居場所」「逃げ場所」「拠り所」をどうつくっていくのか」という教育課題(辻大介さんの提起)を論議しないといけませんね。しかし大阪はスゴイ!見習わなければ。(F・熊本)

報告1 阪大生Tさん

 LINEの「中の人に優しく外に厳しい」特徴をふまえつつ、上手に使いこなしている(?)ところがいいなあと思いました。
 LINEでもめるなどの問題があるのは、現実のリアルな世界の延長上にあること、LINE上のちょっとしたことがリアルな世界に吐き出されてしまう。原因はリアルなコミュニケーションの世界にあるという指摘はなるほどと思いました。

報告2 現場教師Iさん

 クラスの女子生徒が「辞めたい」と言ってきた。
 彼女にまつわるLINEの内容を逐一読み解きながら、そこにある、友人間の「気まずさ」を指摘します。そこから彼女自身が何に悩んでいるのか、寄り添い付き合っていく必要を話されました。
 教師にとってはそこがなかなかしんどいことです。でも、そのめんどさを引き受けることは今の教師の役割でしょう。

報告3 私学S先生「Sくんとの関わりの中で」

 とても考えさせられました。
 入学当初のSくんの作文。そこにはSくんがこれまでずっといじめられてきた経験とその中で自分のアイデンティティを保とうとする思いと高校生活への声にならない期待の入り混じった思いがつづらています。
 悪ぶったりすねたりながら1学期を過ごすSくん。奇異の目で見るクラスメートたち。そのうちLINEで彼を悪く言う事態に・・・。
 その中で、S先生は『「居場所のある教室」「安心できる生活の場」を作り、ひとつの集団として共に学び、共に成長しあうクラス』をめざして、体育祭や文化祭の指導にとりくみます。その中で、紆余曲折を経ながら確実に周囲との関係性が生まれ、Sくんの気づきと葛藤、Sくんをめぐるクラスの生徒の気づきと葛藤が展開していきます。
 そして迎えた文化祭。「俺行かんでいいやろ」と舞台に立とうとしないSくん。「Sが出ないんやったら俺も出やん」と説得するクラスメート・・・。
 でも、Sくんは舞台には出なかった・・・。その後生活が最悪な状態になるSくん・・・。そして、担任のS先生には自らの思いを綴った長文がLINEで届く・・・。
 正直、その文章を読んでぼくは涙がでそうになりましたが・・・。ここのSくんの葛藤も議論の対象になるでしょうが、今日は実践分析ではないので機会をまた改めてやりたいですね・・・。つづく。

お話:阪大准教授・辻大介さん

 これがまたよかった・・・。
 問題の所在は、ネットがあるからではなくリアルな「友人関係」とその背後にある「友だちプレッシャー」であること。「ネット教育も重要だけど、ネットの世界は子どもの方がよく知っている。大人の側も子どもから学ぶ姿勢が必要」と述べられ、友達とのコミュニケーションが盛んだとかえってのめりこみやすいという傾向を指摘されました。

 今は、周りから「あの子、友だちいない子」と思われるのがすごく忌避されるとのことでそういう周囲からの眼差しのプレッシャーが子どもたちを覆っている。今の子どもたちは、「友だち関係志向」がとても高まっていて、LINEやSNSなどのツールへの依存は、友人とのつながりへの依存の表れととらえられるということです。
 昔は、コミュニケーションが苦手・・・というか周囲と合わせるのが苦手で孤高を気取る若者もいたように思いますが、そうした人は「あの子、友達のいない子」と思われて、そうした眼差しに耐えられない若者が拡大している。「ぼっち」とみられることへの不安感があると言います。
 友だち関係をつくることはたとえば就活でも表れていて、就活の情報を得るにあたって友人がいるかどうかは大きな要素でそれが内定獲得の条件にもなっているとのことです。

 辻先生は、社会構造の変化、すなわちコミュニケーションが求められる第3次産業の比重増加と、人の価値観の変化すなわち「物の豊かさ」から「心の豊かさ」という状況変化の中でそうした友だち志向の高まりを解説されました。
 こうした状況の中で、つながりを重視する社会に特有の辛さ、つまり交友関係をつくること、コミュニケーションが苦手な若者・子供に「居場所」「逃げ場所」「拠り所」をどうつくっていくのかという教育の課題を提起していただきました。

【3つの報告と辻先生のお話を通じて思ったこと】
 LINE,SNSはおじさんの私からはうかがえない世界ですが、その世界に展開するのは現実世界、すなわち教室の中のリアルな人間関係だということです。LINEを否定するのではなく、その中に投影されているリアルな世界、人間関係をどう公的な場面に引き出して生活指導の対象としていくのか・・・。
 その意味ではSくんをめぐるS先生の指導実践は大きな示唆をあたえてくれるでしょう。Sくんの物語は現在進行形ですのでぜひ続編が聞きたいと思いました。お話の要点をまとめたとは言えませんし、班討論もしたのですが、今日はここまで。また、じっくりメモを見直して早蕨等で発信いたします。(大阪高生研・首藤)
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